手機

 バスや地下鉄内で携帯電話を普通に使ってよい中国。車内でマナーモードにして下さいだの、電源をお切り下さいだの、うるさいことは言われない。携帯電話の利便性を考えると、どこでも制限無く使えるのは確かにありがたい。
 買い物に行く時などしばしばバスに乗るのだが、この前、例によって携帯電話で大声で話す乗客がいた。暇だったので観察してみると、その男性は誰かに電話を掛けたと思ったら、今度はショートメール。するとどこからか電話が掛かって来て、方言で会話。最後は自宅に電話して、普通語で嫁さんとおしゃべり。「もうすぐ帰り着くよ」と言った後、「良い知らせがあるんだ〜」と。何々?と耳をそばだてると「昇進したんだ」と。その瞬間その男性の方を向いた人は3人。思ったより少なかった。「昇進した」などという話は家に帰ってから話せばええやん、うれしさあまってどうしても早く知らせたいならバスに乗る前に話すべきちゃうの?と思うのは日本人的考えなのかも。
 公共の場にて携帯電話で大きな声で話をするというのは、携帯電話を持ち、仕事もし、自分はちゃんと生きているということをみんなにアピールしているのだと思う。それは薄暗く狭い家の中ではなく明るく広い外でご飯を食べる行為と同じように。中国の人がわざわざ道端に椅子を出して食事をするのは、自分達がご飯を食べるという、生命維持に不可欠な行為を毎日ちゃんと出来ていることをみんなに見てもらうことに他ならない。それは本人が意識しているいないに関わらず・・・。
 最近は、自分の「生」のアピールとして(?)道端で食事をするという行為は都会ではだんだん見られなくなってきており、携帯電話で大声で喋るという行為がそれに取って代わってきていると思う。中国の生活水準が更に向上したら、次はどのような行為で自分の「生」の証を立て、みんなに見てもらうのであろうか。政治的活動かなw 五年後、十年後が楽しみだ。