英雄

 日本では日常聞かれない「英雄」という言葉を中国ではニュースでよく耳にする。「抗日英雄」だの「人民英雄」だの「労働英雄」だの・・・。何か日本語と感覚が違うので《漢語大詞典》を引いてみると「英雄」とは

  1. 才能や武勇が人並み以上に優れている人
  2. 英雄的資質を有する人
  3. 無視無欲で我が身を省みず、危険や困難を厭わず、人民の利益の為に勇敢に奮闘し、人が敬服する人

とある。基本的に現代中国では3の意味で使われているので、ニュースでよく耳にするものと思われる。例としてしばしば挙げられるのが毛沢東の『中国人民大団結万歳』の「人民解放戦争と人民革命の為に犠牲となった人民の英雄たちは永遠に不滅だ!」という文である。この意味だったら誰でも「英雄」になるチャンスがありますな。
 で、神舟六号の飛行士二人はもうすでに「英雄」であります。費俊龍さんの実家は「英雄家庭」の称号を受け、通っていた中学校は費俊龍中学と名前を変える予定だそうで、もう一人の聶海勝さんの母親は「英雄媽媽」の称号をもらうとか。
 昨日101歳で亡くなった巴金も「英雄」なのかと思い新聞を見てみるが、「英雄」という文字は踊っていなかった。『家』、『寒夜』といった作品で、中国革命に参与しようとする知識階級のイデオロギーを表現し、革命を側面支援した、「魯迅先生に最も忠実な学生」たる巴金は「英雄」ではないのか? 文化大革命を経て、中国共産党の(ド)(ク)(サ)(イ)体制をヒ・ハ・ンし続けた人物を「英雄」とはやはり呼べない(呼ばせてもらえない)のかな・・・。合掌。